006|再会 〜京都中書島物語〜

茶話本舗京都中書島デイサービスが開所して2年目の事でした。

 

「事業所内でご利用者様が散髪できるサービスを提供したいのだけれど」

 

管理者の提案によって、私たちはボランティアに来てくださる理美容室を探す事になりました。

有料での訪問理美容はすぐに何件か見つけることは出来たのですが、ボランティアとなると難しく、時間を見つけては何十件もの理美容室に飛び込んではお願いをする日々が続きました。

 

「有料なら伺いますよ」

「ボランティアなんて無理に決まっているじゃないですか」

 

時には門前払いをされながらも飛び込みを続けて半年程が経ったある日、ある一つの美容室との出会いがありました。

「僕たちも高齢者の方がカットに来られた時、どのように対応したらいいか分からない事が多くて困っていたのです。カットのみでよければ、自分達の勉強も兼ねて是非お願いします!」

私たちのお話を熱心に聞いてくださった後、店長様はそう言って快く引き受けてくださいました。

 

それから1ヶ月半に1度、美容室が定休日である月曜日に店長様は何人かのスタッフを連れて、私たちの事業所に来てくださるようになりました。

 

1年が経ったある日のこと。

その日のカットが全て終わり、いつものように店長様は次回のカットご希望ご利用者様名簿をご覧になっていた店長様がちょっと興奮気味に仰いました。

「おっ!このHさん、初めての方ですね!私の祖母と同性同名です!」

Hさんは元々月曜日のご利用はなかったのですが、カットをお願いしたいとのことでスポット利用のご希望された方でした。

「そうなんですよ!このサービスを知って、是非とのことで次回は月曜日にご来所くださることになりました!歌や踊りがとてもお好きな方で、時々炭坑節 を踊ってくださるんですよ」

Hさんの説明をしながら、店長様にお写真をお見せすると、店長様の表情がみるみる硬くなっていくのが分かりました。

 

「祖母です・・・。私の・・・祖母です!」

 

 

翌月。理由あって疎遠になっていたHさんと店長様は、10年ぶりの再会を果たしました。

店長様に髪の毛をカットしてもらうHさん。でもその光景は美容師とお客様ではなく、祖母を慕う孫と孫を想う祖母、そのものでした。

 

ちょうどその時、桜が満開の季節で、  Hさんと店長様は何枚も何枚も、桜をバックに記念撮影をされました。

今まで見たこともないくらい嬉しそうなHさんでしたが、その目にはじんわり涙があふれていました。

 

それからは、Hさんは毎回カットをご希望されました。当たり前ですが、お孫さんご指名です。

 

この再会が偶然なのか、必然なのか、私たちには分かりません。

ただ思うのは、ボランティアで 来てくださる理美容室を探していたあの時、どれだけ門前払いをされても諦めずに門をたたき続けてよかった、ということです。

 

事業所内のサービスだけでは、今回の再会はありませんでした。

事業所内でのサービスの質を向上させていくことは勿論のことですが、事業所を開かれた場所にしていくことで、人と人との繋がりをご利用者様に感じてもらうことも私たちの大切な仕事なのだと気付かされた出来事でした。

 

 

 

豊富な経験とサポートで素敵な物語を紡いでみませんか?