003|階段の先を目指して 〜北郷のものがたり~

平成 25年12月の初め、硬膜下血腫の手術を終えたAさんはリハビリもそこそこに、車椅子に乗ってやってきました。

奥様と二人暮らしのAさんは退院してすぐご自宅での生活が不安とのことで、事業所でお泊まりをしながら、奥様の居るご自宅に戻る日を目指してリハビリを行うことになりました。

 

デイサービスのご利用自体初めてだったAさんは終始うつむき加減で、言葉もあまり発せられませんでした。

物静かで温厚なAさんでしたが、帰宅願望は強く、1日に何度も

「もうおっかちゃんの所戻るわ」

と事業所から出ていかれようとしていました。

私たちはその度に時間をかけて、Aさんとじっくりとお話しをしました。

 

*Aさんは手術をしたばかりで、奥様が一番心配していらっしゃること。

*Aさんの為にも、奥様の為にも、きちんとここで元気になって、ご自宅に戻っていただきたいこと。

 

事業所にいらして一週間程経ったある日、Aさんが仰いました。

 

「実はさ、自宅の玄関に行くまでに階段があるんよ。それを昇るのが難しいんだなぁ。おっかちゃんの所戻る為にも、何とか昇れるようにならんかなぁ・・・。」

 

私たちはすぐさまAさんについて話し合いをし、Aさんの夢を現実のものにするべく、リハビリのプログラムを組み、事業所の環境もAさんのリハビリに則せるよう整えました。

そして改めてAさんの意思を確認し、翌日からリハビリが始まりました。

 

「階段を昇れるようになりたい!」

 

疲れた等弱音をはくこともなく毎日1〜2時間のリハビリを繰り返し、ともするとオーバーワークになってしまうので、そんな時はスタッフがお休みするよう促す程、Aさんの意思は固いものでした。

そんなAさんの回復は目覚ましく、半月程でご自身の両足で自由に段差を乗り越えられるようになりました。

 

 

年が明け、雪深い季節になってきたある日の事。その日もしんしんと雪が降り続いていました。

 

 

窓際に立ち外をずっと眺めていたAさんが、ふとご自身のコートを持ってきました。

そしてニヤッと笑って、スタッフに一言。

 

 

「雪かきした方がいいべ」

 

 

私たちはご家族様、ケアマネジャーに確認をとった後、リスクの管理と見守りの強化を徹底した上で、Aさんに雪かきをお願いしました。

 

何十年も雪かきをしてきたAさんはとても手際がよく、白い息を吐きながら笑顔で楽しそうに雪かきをしてくださいました。

その表情からは雪かきを行える程に下肢筋力が回復されたという自信と、大好きだった雪かきを行えた喜びが溢れていました。

 

 

そして迎えた1月16日。

 

 

2ヶ月ぶりのご帰宅の日です。

12段の階段の先には、最愛の奥様が待っていらっしゃいます。

Aさんの背中が緊張しているのが分かります。

 

一段、また一段。

 

ゆっくりとですが確実に階段を昇られるAさん。

 

途中で一度振り向いたAさんは言葉こそなかったものの、その目は

「大丈夫!いけるよ!」

と仰っているようでした。

 

後ろ姿を見守る私たちの目にも自然と熱いものがこみ上げてきます。そして最後の一段。

Aさんはゆっくりと踏みしめるように昇られたあと、

 

「ただいま」

 

満面の笑顔で仰いました。

 

Aさんの場合ご本人様の強い意志があり、その上でご家族様・ケアマネジャー・私たちスタッフ等、ご本人様を取り巻く周囲の支えがあり、夢を現実にすることができました。

幾つになっても、病気をしても、発語が出来なくても、寝たきりであっても、「気持ち」というものは絶対にあります。

 

私たち北郷職員はその「気持ち」に気付き、寄り添い、ご利用者様の夢の実現への支えになれるよう今後もスタッフ全員で邁進していこうと思っています。

 

 

 

 

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